September 1991996

 反故焚いてをり今生の秋の暮

                           中村苑子

年の秋ではなく「今生の秋」。いま歩いている街の風景を、これがやがて私がいなくなる世界だと思いながら眺めはじめたのはいつからだったろう。街をそうした視点をもつ壮年が歩いている一方で、庭の片隅でひっそりと反故(ほご)を焚いているひとがいる。秋の夕暮。『吟遊』(1993)所収。(辻征夫)




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