September 1291996

 大空の雲はちぎれて秋祭

                           前田普羅

月のこの国は、お祭りでいっぱい。毎日、日本のどこかで祭がある。なんの変哲もない句であるが、まっすぐに秋祭の気分をとらえていて、心に残る。敗戦直後の句であり、しかも富山在住の普羅が空襲で一切を失ったことを知る者にとっては、悲しいくらいに美しい詩心が感じられよう。以後、普羅は漂白の人となる。妻無く(昭和18年に死別)、子無し。といっても、映画「寅さん」の呑気な放浪とは違うのである。門人を頼っての苦しい「旅」の連続であったという。『雪山』(ふらんす堂文庫)所収。(清水哲男)




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