September 0591996

 九月の教室蝉がじーんと別れにくる

                           穴井 太

き中学教師だったころの作品。そういえば、そうでしたね。この季節、遅生まれ(?)の油蝉なんかが、校庭の樹にいきなりやってきて鳴いていました。蝉しぐれの時も終っているだけに、その一匹の声が、ヤケに声高に聞こえたものです。懐しくも切なく感じられる一句です。私は学校が嫌いでしたが、やはり学校はみんなが通った共通の場。この句を読むと、それぞれにそれぞれの郷愁をかきたてられるのではないでしょうか。字余りは作者得意の技法ともいえ、これを指して「武骨に澄んでいる」と評した城門次人の言は的確です。『鶏と鳩と夕焼と』所収。(清水哲男)




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