August 3181996

 秋風や酔ひざめに似し鯉の泡

                           大木あまり

夜は、つい調子にのって飲み過ぎた。重い頭で目覚めたが、連れの友人たちはまだ起きてこない。旅館の庭に出てみると、池には大きな鯉が飼われていた。のろのろと動き、ときにふうっと泡を吹いている。秋風のなかの白い光景。酔いざめのときにも、俳人は句心を忘れない。作者と面識はないが、なかなかにいける口の女性だという噂を、かつて新宿で聞いたことがある。『火のいろに』所収。(清水哲男)




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