August 161996
酌婦来る灯取虫より汚きが
高浜虚子
昭和九年の作。虚子に、こんな句があるとは知らなかった。先日、仁平勝さんにいただいた近著『俳句が文学になるとき』(五柳書院)を読んでいて、出くわした作品だ。仁平さんも書いているように、いまどき「こんな句を発表すれば、……袋叩きにされかね」ない。「べつに読む者を感動させはしないが、作者の不快さはじつにリアルに伝わってくる」とも……。自分の不愉快をあからさまに作品化するところなど、やはり人間の器が違うのかなという感じはするけれど、しかし私はといえば、少なくともこういう人と「お友達」にはなりたくない。なお「酌婦」は「料理屋などで酒の酌をする女」、そして「灯取虫」は「夏、灯火に集まるガの類を言う」と、『現代国語例解辞典』(小学館)にあります。念のため。(清水哲男)
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