19960725句(前日までの二句を含む)

July 2571996

 死なふかと囁かれしは蛍の夜

                           鈴木真砂女

派大悲劇の幕開けではない。遠い日の蛍の夜を思い返しているうちに、「死なふか」という声がリアルによみがえってきた。しかし、その声の主は幻。あるいは、その声はみずからが自分に向けて囁いたもの。青春は過ぎやすし。そして、その思い出は幻として浄化される。この句を事実と読むのはもとより自由だが、そう読んでは面白くないと、私は考える。『都鳥』所収。(清水哲男)




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